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    2011

05.16

ぼんやりと仰いで、晴天

 じりじりと照りつける日はまだ遠い。
 それでいて口をつく言葉は、
「暑い」
 とは言っても嫌いな暑さではないのだ。夏自体が嫌いではないし、汗ばむ陽気と言うだけで、暑苦しいなんて程のものでもない。五月も早半ばを迎え、無駄に年を一つとって間もない今日の午後。雲のほとんどない空のせいで日差しは真っ直ぐに僕を照らしてくるので、まぶしさに目を細め、眉間に皺を寄せて、ただでさえさほど造作の良くない顔をぶさいくに歪めていた。
 大して口も開かない。数歩歩いてベンチへ座る。周りにも数人いて、皆乗車を待っている。自動車学校の敷地内にある練習コースの一角。乗車する人は時間にはそこにいて、教官から名前を呼ばれるのを待つのだ。
 口を開かないのは、少し眠いせいもあるが話す相手がいないというのが理由の大半だ。学生が免許を取りに来る時期ではないし、まして僕くらいの年の学生は既に持っているか、もう取らないかのどちらかだ。だから必然的にそこにいるのは、年上か、年下か、いずれ年も状況も異なる人たちばかりで、そうなると集まるということがないから知り合いがたくさんなんて状況にはなりづらい。
「おつかれーっす」
「おう。どうだった受かった」
「いやー、ダメ。これで五回目だっつの」
「お前バカだなー」
「うるせーっつーの」
 かと言って、唯一形成されているああいうやんちゃなグループに所属するわけもないから、結局話すのはたまたま一緒に乗車した数人か、そこから繋がった僅かの人だけだ。
「お疲れさま」
 少し片言の日本語で声をかけられる。顔を向けると、見知った顔。
「お疲れ様です。これから教習ですか」
 眼鏡をかけた中国人。名前は知らないのだが、何度か言葉を交わした仲だ。この教習所に来てから見る生徒の約半分は海外の人で、その大半が中国人。その他にモンゴル人、フィリピン人などもいる。ああ、そうだ。そういえば中国人も彼らのコミュニティを作っている。食堂へ行けばいつも一緒だし、同じ部屋にいて延々話していたり、あえて一人になろうとしない。そういう国民性なのかもしれない。
「そうなんだよ。朝から三回も乗ってワタシもうつらい」
「でもあと何日かで終わりますよ」
「そうだね。早く帰りたい」
「僕も早く帰りたいです」
 中国人というのは大抵お喋り好きなイメージがある。きさくで社交的で、時間と場所に構わず大きな声で話してしまうのが日本人には疎まれがちだが、根が素直でいい人が多い。日本で出会った中国人はそういう人がほとんどだ。この評価はあくまで僕が出会った数人との間での、それも僕自身の視点からの確認でしかないが、少なくともインターネット上や世間で見られる反日的な中国人像を信じている人よりも事実に近いイメージを持っていると、僕ははっきりと断言できる。
 なんて、小難しいことを考えるのにはもったいない陽気だ。見上げれば青、反射する光。ぼんやりとただ空を見て、待つでもなく、思うでもなく、そこにあるのはただの自分。
「暑いなあ」
 過ぎ去って行く日々も、僕を待つ日々も、その間にあるこの一時の中では無意味で、そうしてやり過ごしていくのが僕の分相応なのだ。あれこれ考えるのはしとしとと雨が降り続く頃になってからでいい。今はただ、ぼんやりと仰ぐその青が、僕の全て。
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日記
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